『カセットテープ・ダイアリーズ』を観てきました。
ポスターに一目ぼれして鑑賞を決定。この情勢で延期になっていましたが、無事公開になり一安心です。
舞台は1980年代後半のイギリス。パキスタン移民の子であるジャベドがブルース・スプリングスティーンの音楽と出逢い、成長していく青春ストーリーです。
文学と詩を書くことを愛する青年・ジャベド。親友とバンドを組んでいて歌詞を提供したりもしていますが、内容は不安定な政治や人種差別、経済などへの怒りや叫びが中心。そんな彼がハイスクールへ入学し、出逢った青年からブルース・スプリングスティーンのカセットテープを受け取ることで、彼の世界が大きく変わっていくことになるのですが・・・。
とにかく、キャスティングが素晴らしかったです。全員!
特にヒロイン。今注目の役者さんだそうで・・・ここにも未来のボンド・ガールが?少なくとも、今回の世界観&ファッションにはドンピシャにハマっていました。主演はもちろん、ジェベドのお父さん、お母さん、親友、親友のお父さん、隣に住む老人・・・みな、どこかの映画で見かけたぞ?という人たちばかり。お母さん役のキャストは薬剤師でもあるとか!ダブルキャリアを実現しているなんて、本当に尊敬します。
ストーリーも軽やかなようで、ただ主人公の成長を追うだけに留まっていません。
当時のイギリスの移民問題、移民への偏見と嫌がらせ、パキスタンの伝統的な家庭のあり方・・・一つ一つをとても丁寧に描いていて、単なる青春&成長物語で終わっていなかったところが、とても素晴らしかったと思います。お姉さんの結婚式の日にデモに巻き込まれる家族の姿は痛々しくもとてもリアルでしたし、最後、お父さんと和解する場面はほっとしました。このお父さん役の方も良い役者さんなんです、本当に・・・。
原題は『Blinded by the Light』邦題と大分違うタイトルだな、と感じたのですが、調べたところ、ブルース・スプリングスティーンのデビュー楽曲だそうです。ブルース・スプリングスティーンのファンでなくても、十二分に楽しめる作品だと思います。もちろん、彼の音楽のファンにとっては尚の事・・・。
音楽がメイン、しかも特定のアーティスト一点集中なので、本当に好きな人でないとわざわざ劇場まで行って・・・と思う作品かも知れません。でも、こういう良作に出逢えると、やっぱり映画館で映画を見る喜びを感じます。多くの人に楽しんでほしい作品です。