『17歳のウィーン』を観てきました。
半年ぶりのルシネマです。劇場ロビーのバーが閉鎖になっていてがっくりしました。こんなところにも、余波が・・・。
今回の映画、少し迷いましたが鑑賞。
副題は「フロイト教授 人生のレッスン」著名な大学教授と色づき始める青年の心温まる物語かと思いきや・・・。
時代は1930年代のウィーン。パトロンを失い生活に困った母親から、生活費を稼ぐためにウィーンの知り合いの下で働くよう懇願され、田舎から都会に出てきた一人の青年。母親の昔の恋人が営む「キオスク」で様々な人に出逢い、恋をして、そして時代の大きなうねりに飲み込まれていきます・・・。
副題の通り、フロイト教授と主人公の青年の心の交流がメインかと思いきや、ナチスの足音が聞こえ始めた時代の人々の様子がとても丁寧に、時に残酷に描かれていてる作品でした。ブルーノ・ガンツの遺作という触れ込みも多いですが、ストーリーがとても良かったです。戦争へと向かっていく、抗えない時代の流れの中に生きるしかなかった人たちの姿が丁寧に、シビアに描かれていました。画面も全体的に薄暗いというか、ほの暗い明るさで作られていて、印象に残りました。
最後は思わず「えっ・・・」と言葉がこぼれてしまいそうなラストだった。そう終わるのか・・・!大きな山もオチもないストーリーですが、それが逆にあのラストを引き立たせたように感じます。
主演の男性、とても素敵でした。時折見せる愁いのある表情が繊細で、まるでクラシカルなフランス映画を見ているようで・・・。他の作品も見てみたい役者さんでした。
原作が小説ということで、図書館でさっそく借りてきました。執筆した人は俳優からキャリアをスタートして小説家デビューしたのだとか。映画を見た後に原作ってどんな印象になるのだろうか。どの程度脚色があるのかもまだわかりませんが、楽しみたいと思います。過去には舞台化もされているそうで、日本の戦時下の設定で公演してみても面白そうだな、と思ったり。