笑うな!
土砂降りの日は思い出話でも・・・ちょうど10年頃前の今頃、とある舞台の稽古をしていました。
その作品は子役さんが多く出演されていて、某大手事務所でしたが・・・稽古場に来られていた社員の指示の出し方(子役さん&保護者への)や解散時間の厳守などが正確でテキパキとされていて、大手は訓練されているな~とやたら感心したことを覚えています^^;
そして出演者の中に、高齢のおじいちゃまがいらっしゃいました。主人公の祖父という大事な役柄でしたが、役者が本業というわけではなく、演出家の知り合いのダンスの先生の生徒さんという、面白いご縁で出演して下さいました。
そんな上から下まで大所帯のメンバーで色々ありながら稽古も中盤を迎えたある日、出演者全員で踊るシーンの振付がありました。
ダンスは得手不得手が割とあからさまに分かるもので、しかも上達までにはある程度時間を要します。そのため、上手い下手というか・・・どうしてもキマる人、キマらない人が出てきます。
先のおじいちゃま、確か日常の歩行も少し大変そうなときがありました。それでも全員参加の踊るシーンは皆と同じ振り付けだったのです。当時は「配慮をすればいいのに」と思いながら稽古に参加していましたが、それを「馬鹿にしている」と感じる人もいるのでしょうね。
確か出演グループごとに前に出て振付を確認していた時でした。 おじいちゃまの少し遅れたテンポで踏むステップはどこかコミカルにも見えて、そのほのぼのとした様子に、子役さんたちからは笑い声も上がりました。
しかし、次の瞬間。
笑うな!!!
と、そのほのぼのとした空気をつんざくような鋭い声が飛んできたのです。びくっとした空気が稽古場を包み、何とも言えない神妙な空気になったのを覚えています。
その人は稽古場でリーダー格のような方で、次第に座組全体をまとめて言った方でした。何というか、もうちょっと言い方があるだろう、そんな部活の監督みたいなやり方じゃなくて・・・とも思いましたが、その方の言いたいことは理解できます。
踊っているおじいちゃまの表情は真剣そのものでした。「自分は高齢だから出来なくても良い」なんていう気持ちは全くなく、自分の孫?ひ孫?ぐらいの年齢のお子さんたちと一緒になって、必死に振付を覚えていました。
そんな一生懸命に取り組んでいる姿を笑ったり、馬鹿にしたりするような態度は、決してあってはならないことです。まして、同じチームで一緒に芝居をする出演者であれば・・・。人としてみっともないは当然ですが、そういうことをされると心も体も閉じてしまって舞台上で自分が下手に見えるし、相手の良いところも引き出せないままですよね。結局笑った相手の芝居も下手に見えるし、誰も得をしない。
子どもたちに悪意がないとはいえ(調子に乗る子もいるのでね、中には・・・)、チーム全体のことを鑑みて、その方もあえて大袈裟に厳しく指摘したのだと思います。が、指導って難しいですよね。指導する方が一生懸命になっても、される方に受け取る器がないと暖簾に腕押しで終わってしまうから・・・「なんであの人がいきなり仕切りだすの?」みたいな雰囲気にもなりかねません。何とか無事に(?)終わったけれど^^;
既に亡くなった出演者もいたりして、思い出しながら時の流れをふと感じました。今もお芝居を続けている子役さん、いらっしゃるかしら。お芝居ではなくても、それぞれの道でご活躍されていて下さったら嬉しいです。
今日は出先でもずぶ濡れ、自宅に帰ってもちょっと用事を済ませるために出かけたら雨が降ってきてまたずぶ濡れ。靴もバッグも水浸し・・・。レッスンから帰ってきて、自宅でゆっくり珈琲を飲みながら遅い食事をとる時間って、とっておきの贅沢なひと時!しばし満喫します。