『ベル・エポックでもう一度』を観てきました。

先日はつかの間の休みを利用してシネスイッチ銀座へ。ノスタルジーなポスターに一目ぼれしました。

かつては売れっ子イラストレーターだったが今は落ち目の男性が、息子が立ち上げたタイムトラベルサービス「時の旅人社」に招待され、人工的なタイムスリップを経験する・・・というお話し。

タイムストリップと言えばSFモノの定番ですが、この作品の面白いところは、それを企業がビジネスとして行っているというところ。ハリウッドのような巨大なセットを敷地内に作り、建物はもちろん、エキストラもその時代を彷彿とさせるような衣装や立ち居振る舞いを身につけています。たまにずっこける人もいるけど^^;1974年のフランスの経済・財務省の大臣なんてわかりますか?こういうちょっとした質問ってドキっとしますよね。その時代を生きた人でないと分からない質問というか・・・。

男性が戻りたいと語ったのは、愛する妻と初めて出会ったあの頃。今は色々あってすっかり冷え切ってしまったけれど、戻ってまた会いたいということは愛情がどこかにちゃんとあるという事ですよね。奥さんも落ち目になった旦那に耐えられず新しい恋人を作ったものの、やっぱり旦那が良いとなり・・・。

最初は無精ひげで生きる事さえ自暴自棄になっているような男性が、タイムスリップし、ホテルに用意されていた衣装を身につけるために髭をそって髪を整えると・・・すっごくいい男!1970年代のスーツもとても似合っていて、ちょっと浮足立っていて自信にあふれている様子がとても微笑ましかったです。

物語は、主人公の男性と、男性の妻の若い頃を演じる女優、そしてその女優に恋をするプロデューサーという関係が上手く絡んで進んでいきます。時に執着とも思える女優とプロデューサーの関係ですが・・・物語が進むにつれ、どこまでが幻想なのか、どこからがリアルなのか。境界線があいまいになっていきますが、それもとても面白く・・・女優に本気で惚れてしまい、虚構と現実の区別がつかなくなる主人公。割り切る役者さんの気持ちは非常によくわかります笑。

「Belle Époque」とはフランス語で「良き時代」の意味。具体的には19世紀末から第一次世界大戦が開戦されるまでの時期を指しますが、きっと誰にとっても存在する「良かったな、あの頃」と思う時間の流れってあると思います。でも結局、今を生きるしかないわけで・・・最後、夫婦が出会った頃のセットの中で会話を交わすシーンは涙がこぼれました。ちゃんと最後に落としどころを作ってくれるあたり、やっぱり嬉しかったです。見応えのあるベテランが揃っているのだから、良い芝居で泣かせてほしい。

そう、やっぱり今が一番なんですよね、きっと。

landlady
お芝居をしています。寄り道と道草ばかり。お時間がある時にふらっと覗きに来ていただければ嬉しいです。