自分の歌声
私の芸事のレッスンのスタートは、実は演技でもダンスでもなく、歌でした。地元でスタートできるレッスンで一番すぐにできそうだったのが、歌だったからです。
その時のレッスンが良かったかどうか、今となっては「?」ですが・・・。とにかく、何かを「始める」という意味で、とても良かったと思います。熱心な先生のご指導の下、その時その時、一生懸命にレッスンを重ねてきました。
ですが、レッスンをすればするほど、自分の欠点やできないところばかり見えてしまい「ないものねだり」になってしまいます。
ミュージカルの専門学校に通っていた時は、ミュージカルの曲を散々聞いていました。国内外の様々な楽曲を聞いていましたが、アメリカで発展した文化らしく、パワーと熱で押し切るような曲が多かったと思います。また、そういった曲を通じて、元々そういった体の強さ(繊細過ぎない、良い意味での丈夫さや感覚の図太さ)がないとプロのミュージカル俳優への道のりは厳しい、という現実を見た気がします。幼少期からの教育ももちろんですが・・・肌が繊細過ぎる人が美容師さんや美容部員さんの仕事が難しいのと同じように、過敏な感覚が時に進みたい道への邪魔をしてしまうことも、あるのだと思います。
「もっと自分は繊細な喉を持っているということを自覚しなさい」と、言われたのはいつの頃だっただろうか。どうしてもアップテンポでパワーの強い曲ばかり持ってくる私に、そういってくださる先生がいらっしゃいました。そうして明るくハッピーなイタリア歌曲との格闘が始まるのであった・・・。いつの間にか染みついていた「パワーがあって強い声=良い声」のような謎の思い込みも取れていきました。
自分の方向性を理解し、正しい方向へ進んでいくことは、とても大切なことだと思います。
オードラ・マクドナルドはギターをぶら下げていたらずっと駅前にいたかもしれませんし、カレン・カーペンターがブロードウェイを目指したとしたら、あれほどの成功はなかったと思います。濱田めぐみさんのパワフルな歌唱も素敵ですが、白鳥英美子さんの繊細な歌唱も素敵です。ジェニファー・ハドスンやコニー・エヴィングソンも大好きですし、原順子さんも大好きな私・・・。そう、魅力や持ち味は全く違いますが、皆さん「歌手」ですよね。ジャンルは違っても、そこに上下や優劣なんてありません。皆さん、本当に素敵です。
肉体の若さにかまけて、無理をして憧れの〇〇さんの真似をしても、肉体に衰えと共に使い物にならなくなるでしょう。それでは寂しいから・・・。どんなに頑張っても努力をしても、憧れの〇〇さんのような歌声にはなれないかもしれません。それでも、だからこそ、自分だけの歌声を大切に磨いていきたいと思います。