頼んでもいないのに暗くするな!
夏も本格的になると、着替えるのもおっくうになりがちですよね。こんな時期だからこそ、手抜きをしないで装いを楽しみたいです。今年は日傘に頼り切り・・・^^;
さて、過去のレッスンを振り返って、思い出したことを一つ・・・。
随分前ですが・・・専門学校のクラスが一つ上がって最初の授業での出来事。先生が「これを読んでみて」とプリントを全員に渡しました。プリントに書かれていたのは「暗い翼」という詩でした。(気になってあとから調べたら、谷川俊太郎さんの作品だと知りました。)
「読んでみたい人は?」という先生の問いに、確か2~3人が手を挙げて読んだような記憶があります。
そして、一通りの読みを聞いた先生が一言・・・。
「あのさぁ、なんでお前たちは頼んでもいないのに暗くするの?」
なんできれいに読もうとするの?NHKのアナウンサーみたいに読むの?プロのアナウンサーじゃないんだから、お前たちがそれっぽく読んだところで面白くもなんともないんだよ。俺たちは“役者”なんだよ・・・。確か、そんなニュアンスのことをおっしゃってくださいました。
そう、きれいに読もう、ちゃんと読もう、読まねばならない・・・。どこかでそういう先入観があったんですよね。タイトルも「暗い翼」だし、笑。私たちの仕事はきれいに読むことではなく(演出から指示されたらそうするけれど)、目の前のお客さんを楽しませて、喜ばせること。聞いている人が楽しくなるような音、面白く感じる音を探して、それを作って、届ける・・・。
子供が読んでみたら?叫ぶみたいに読んだら?確かそういった別の角度からの提案で言葉遊びをした記憶があります。
私の場合、例えば公演の台本を頂いて初めての読み合わせや初立ちの時など、不慣れだったり緊張していたりすると、つい暗く、重くして何とか「立派」に見せようとしがちです。以前にとある演出の方が「重くしすぎるな!特攻するな!!」と他の出演者に言っているのを聞いて「特攻芝居」と呼んでいますが・・・。
今のご時世、こういう表現は相応しくないのかもしれませんね。もっと単純に言うなら「自爆するな」ということでしょうか。歌もそうですが、いったん重く(低く)してしまうと、そこから明るい(高い)方向にもっていくのってとてつもないエネルギーが要ります。だからこそ、不用意に重くしない。軽やかに、明るく、音は全体的に“高め”で!
ちょっと深刻そうだったり、シリアスな台詞があると「そちら側」によってしまいがちだけど、特にシチュエーションの指定がないなら、面白くしたいですよね。他の人と違うというか・・・。皆が昼なら夜、にぎやかな場所なら静かな場所、険悪だったら仲良しとか・・・。何より、そうやってちょっと遊びながら作った芝居って、やっていて楽しいし、見ている人に笑ってもらえたらもっと最高!ハッピーな気持ちになれます。
お芝居をする中で、こういう気持ち、どこかに置いてきぼりにしていないかと、時折心の点検をしないといけませんね。