『AIR/エア』を観てきました。

先日、ようやく鑑賞してきました。品川にて・・・。周囲は7割くらいが男性?バスケットボールファンと思われる方がほとんどで、足元のスニーカーを見るのが楽しい観客席でした。

舞台は1984年のアメリカ。有名スポーツメーカーであるNIKE(ナイキ)のバスケットボールシューズ部門が業績不振から逆転劇を見せるサクセスストーリー・・・。というのが大まかすぎる大まかな流れ。監督はベン・アフレック、主演はマッド・デイモン。どこかで見た組み合わせ・・・かと思っていたら、2020年公開の映画『フォードvsフェラーリ』のコンビでした。こちらも見応えのある面白い作品だったな。

1984年当時、バスケットボールシューズのシェアは1位がコンバース(同年に行われたロス五輪のオフィシャルシューズ?もコンバースだったのだとか)、2位がアディダス、3位がナイキ、という序列だったようです(その後、コンバースは2001年に倒産、2003年にナイキに買収されています)。当時のナイキの主力製品はランニングシューズだったとか・・・。そんな時代の中、当時無名の大学新卒選手だったマイケル・ジョーダンを獲得するために根回し・手回しに奔走し、「エア・ジョーダン(マイケル・ジョーダンをイメージした今も世界的に売れ続けているシューズブランド)」を開発し、マイケルを口説き落として契約するまでのあれこれがスピーディに展開していきます。意外に短かったんですよね、上映時間。ナイキ社だけでなく、他社との駆け引きなども描かれていたので、より物語が立体的に楽しめました。当時のバスケットボール事情を知っている方はより楽しめると思います。

個人的に期待していたのは、今回の作品の重要アイコンでもあるマイケル・ジョーダンの母親を演じたヴィオラ・デイヴィス。マイケル・ジョーダンのビジネスでの成功の陰には多くの人の手が加わっていると思いますが、その大きな力の一つだったのは間違いなくこのお母さんだったと思われます。ナイキ社に「エア・ジョーダンの収益の一部をジョーダン家に支払ってほしい」と持ち掛けるなど、今では当たり前に行われているライセンスビジネスの走りだったのではないかと思われます。

全体的に感じたのは、台詞の量(応酬)が多かったな、ということ。スポーツを扱った作品なので、もっと音楽や映像(実際の試合のシーンなど)で膨らませるのかと思っていました。登場人物が割と多い作品なので、皆喋る、喋る、喋る!いかにもアメリカ映画、という感じの台詞の雰囲気や会話の応酬は見ていてとても楽しめました。

印象に残ったのは、マッド・デイモン演じるソニー(ナイキ社の営業担当)と、突然ジョーダン家に押し掛けた彼と庭で会話をするヴィオラ・デイヴィス演じるデロリス(マイケルの母)のシーン。丁々発止のやり取りの中、ソニーがデロリスに「(アディダス社のプレゼンに出席する際に)経営の最終決定権はどなたにありますか、と聞いてみてください」と提案します。当時、アディダスは創業者が逝去し、家族経営の会社といえど盤石な一枚岩とは言えない状況でした。自社の魅力を伝えるのではなく、あえて他社の脆さを突く質問をさせて、ナイキ社に目を向けてもらえるようチャンスを作る・・・という脚本(恐らく半分くらいはノンフィクションなのだと思いますが)が上手いなと感じました。でも一番ニヤリとしたのはやはり最後の契約のシーンですね。『フォードvsフェラーリ』の時も思いましたが、最後のひっくり返し方が本当に上手なんですよね・・・。

GW期間、まだまだ上映されているようですので、お時間がある方は是非。取り敢えず顔ぶれだけでも損はしない作品だと思います。

landlady
お芝居をしています。寄り道と道草ばかり。旅と自然と動物と音楽が生きる糧。